TwitterAnalysis

巨大メディアグループWPPがTwitterと組むただ1つの理由


 

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2010年売上げ:2012年にはWPPグループ売上げは165億に達している。

6月6日にTwitterとWPPグループのグローバルでの戦略提携が発表になりました。これは大きな注目に値する動きです。Twitterは4月にもメディアプランニングエージェンシーであるスターコムとの提供を発表していますが、この一連の動きをどう解釈するのか、まとめました。

巨大メディアグループWPPとは

グローバルに展開する巨大メディアグループで、傘下には数々の広告代理店、PR代理店、メディアプランニングエージェンシーを抱えています。そのクライアントであるグローバル企業は昨年度計700億ドルもの額をメディアに投資し、そこからのWPPの売上げは165億ドルにものぼります。

Twitter x WPPの戦略提携の意図

そのWPPが今回Twitterと組んだ理由、それは一言でいうと「データドリブンマーケティング」に尽きます。つまり膨大に蓄積されたTweetデータを、現在WPPが持っているメディア分析のプラットフォームに組み込むことで、より効率的で質の高いクリエイティブやメディアプランニングを提供できるようになるからなのです。具体的にどのような施策となって出てくるのかは追って発表になるとのことですが、このデータドリブンマーケティングがもたらすことを可能な範囲で予測してみましょう。

TwitterAnalysis1)よりリアルタイムで詳細な消費者理解

従来のやり方では、時間とコストをかけて定量・定性での消費者リサーチを行って、ターゲット消費者のペルソナを編み出すというのが定番でしたが、Twitterのデータ分析によりリアルタイムで消費者が何を思っているのかを分析し、施策に活かすことができます。(もちろん、オンラインでつぶやく消費者のデータというバイアスを前提として)

当然、リアルタイムでTweet内容を追うといったことは、各社既に行っていると思いますが、今後可能になることは更に踏み込んだものとなるはずです。具体的イメージとしては、Tweet内容をクラスター分析にかけ、オンライン上の消費者がどのようなグループに分けられるのかといったセグメンテーションの見える化、各グループや各消費者がお互いにどう影響を与え合っているのかのバズの伝播経路の見える化、また時間軸とともにそれぞれのセグメンテーションが拡大縮小するトレンドまでもが追えるようになるはずです。

2)複数メディアの最適な組み合わせによる広告効果UP

WPPグループのCEO Sir Martin Sorrellは今年3月のハーバードビジネスレビューでのインタビューで「TwitterはWOMを生むための効果的なPR媒体だが、広告媒体ではない」と主張していますが、私はこの言葉に反する結果が出てくるのではないかと予想しています。実際には、TwitterをWPPグループの提供する他媒体と組み合わせることで、より効率的な広告効果を打ち出せる商品を提供することが可能です。自然に考えると、Twitterと他媒体の広告効果を分析し、最適な組み合わせを製品化することになるでしょう。特にWPPグループの抱えるメディアプランニングエージェンシーの得意とするTVの効果測定にTwitterの指標を組み込むことで、ソーシャルビューイングの領域に踏み込んで効果測定をすることが可能になっていくのではないかと期待しています。

3)WOMからの売上げ予測

この領域はTwitterだけでは完結しないかもしれません。ただ、期待もこめてあえて言うと、今後WOM(口コミ)がどの程度売上げに貢献しているのかが明らかになってくるのではないかと思うのです。TVやオンライン広告からの売上げ予測はできても、今までなかなか数値化することが難しかったソーシャルメディアのインパクト。それが、TwitterのデータをWPPグループのメディアプランンング分析のプラットフォームに組み込むことで可視化できるはずなのです。そこまでできれば、WPPクライアント企業のメディア戦略に大きな影響を与えることになるでしょう。

どうでしょうか。従来型のメディア分析に強みをもつWPPグループのメディアプランニングエジェンシーが、ソーシャルメディアの膨大なデータを手にするというのは、大きな可能性でもあり、そのグループ外にいる企業にとっては脅威でもあると思います。WPPグループが「数週間、または数ヶ月後には発表する」と明言している、新たなサービス概要が楽しみです。

参考:
http://www.wpp.com/wpp/press/2013/jun/06/twitter-and-wpp-announce-global-strategic-partnership/
http://hbr.org/2013/03/martin-sorrell-on-whats-next/ar/1
http://www.automotivedigitalmarketing.com/profiles/blogs/twitter-and-70b-giant-wpp-announce-rockin-global-strategic-tweet 


Author: Kazuyo Nakatani 中谷和世 Kazuyo Nakatani: 音楽大学声楽科卒業後、留学斡旋企業の営業/マーケティングを担当。その後、USへ渡り2007年にミシガン大学MBA取得。2007年〜2012年P&GにてSK-IIのマーケティングに従事する。うち3年はシンガポールに駐在。現在は東京在住、オンライン動画配信ビジネスのMarketing Directorを勤める。