SXSW2015にみる最先端テクノロジートレンド セミナー&カンファレンス Tweet 今年もお休みをとって、SXSWに行ってきました!3月13日〜17日に開催されたインタラクティブの模様をレポートします。 SXSWとは? SXSW(”South by South West”)とは、毎年3月にテキサス州オースティンで開催される、IT・映画・音楽の巨大フェスティバルです。 元々は1987年に音楽フェスとして始まったらしいのですが、年々参加人数が増え続けているとのことで、開催期間は街が究極のカオスと化します。 参加者はインタラクティブと呼ばれるIT部門だけで、なんと82カ国から32,798人、3部門合わせると8万人を超えるとのことです。 私自身、2014年に初めてSXSWに参加し、そのカオスを満喫(?)。とにかく大混雑の中に身を置くだけでも大変でしたが、ここで得られるエネルギーと知識の大きさは、他では得られないのです。2014のSXSW終了直後には、あんなカオスな場所もう行かない!と思ったはずなのに、また1年たつと戻りたくなる、そんな中毒性のある場所です。 開催されたセッションの数はインタラクティブだけで、なんと合計1,100。(1,100ですよ、1,100!5日間だけなのに!)1,100のテーマを見るだけで、今、テクノロジーの最先端では何が注目されているのかがわかるのです。去年と比較して、今年のトレンドはどこへ向かっているのか、レポートします。 注)とはいえ、1人が出席できるセッションの数は、どんなに頑張っても最大30そこそこ。3%にも満たないので、以下あくまでも、「私の経験したSXSW」というバイアスが含まれることをご了承ください。 今年、HOTな領域は何だったのか? ■ IoT(Internet of Things、つまり「もののインターネット」) 今回、何よりもまず目立っていたのは、IoT関連。今なによりも、その将来性に期待されている領域です。中でも、ネットにつながれた車やIndustrial IoT(工業用)等の話題が多かったように思います。 と同時に、IoTといってもその領域自体が広すぎて、なんとなく定義について話しあっていたり、パネルディスカッションしていてもパネラーの専門領域が異なりすぎてイマイチ話がかみ合ってなかったり、具体化されていない感じも受けました。 それが、IoTの現状なのだなと感じると同時に、おそらく、来年はこれがぐっとフォーカスされてくるのではないかと想像します。 ■ VR(バーチャルリアリティ)・AR(オーギュメンティッドリアリティ) 日本での最近のOculusの盛り上がりと同じく、SXSWでもVR・ARはとても勢いのある分野でした。 特にゲームショーでのOculusの活用ぶりはとにかく圧巻。どこもかしこもOculusという光景でした。 まだまだVR酔い(=バーチャルリアリティ体験後は車酔いのように気持ち悪くなることがあります)の問題を抱えていることから、ゲームの活用は数分が限界ということ。 そんな中でも、今後の可能性から、ゲームディベロッパーがOculusを取り入れようとしている熱意を感じました。 ただ、さすがはSXSW。一般に認知されるようになった内容にとどまらず、セッションで語られる内容はその先を行っていました。 まず、Holo系のARのトピックが多かったということ。これはやはり、最近のMicrosoftのHoloLensの発表による影響でしょう。 また、VRネタでも、セッションにおいては「今後VRをどう活用していくのか」という内容にまで踏み込んでいました。 例えば、「360度映画を撮影する上での手法」とか「音楽産業にVRを活用するには」とか「ポルノのためのVR」とか。そして、「もっと気軽にVRを使ってもらうためには?」などというトピックも。ヘッドマウントディスプレイを一般ユーザーが気軽にゲーム等するときに身につけるようなレベルにまで浸透させるには、あと一歩足りないという自覚もあり、その課題解決についてのディスカッションもありました。 ■ Media これも去年に比べると圧倒的にトレンドとなっていました。なにより、Media関連のセッションがとても増えた気がします。やはり、去年のNYTレポートリーク事件の影響からか、USにおけるニュースメディアの大きな危機感を感じます。具体的には、BuzzFeedやNYTのようなニュースメディアのディスカッションが目立っていたように思います。 また、近年のコンテンツマーケティングの盛り上がりを反映してコンテンツ制作についてのセッションも。私は参加できませんでしたが、GEにコンテンツマーケティングを取り込み成功させたことで有名なLinda Boff氏も登壇していました。 他には、TVやソーシャルメディアとの関連性などのトピックもちょこちょこ。こういったテーマは従来AdTechなどではよく取り上げられるものの、昨年のSXSWではあまり見かけなかったように思います。これも、メディア業界の危機感からきているのかもしれません。 ■ AI(人工知能) AIの領域は、近年ぐっと開発がすすんでいるからか、これも去年からすると注目度が大きく上がった気がします。 去年は、さほどAI関連のテーマを目にしなかった気がするのですが(私の興味がよりAIに対して強くなってきたというバイアスを抜きにしても)今年は重要テーマ扱いされているように思いました。 最近オンエアのあったNHKスペシャルの「ネクストワールド」でも紹介されたBina48という人工知能のクローンを作っている Martine Rothblattがキーノートスピーカーとして登壇していました。 「我々が望む望まないに関わらず、人工知能が発展し自我を持つような時代はやってくる」と話しているのが印象的でした。 ■ Drone 今年になって新たに登場したのがDrone 。 かなり小さなものがすごいスピードで飛び回るのや、自分の手の上で宙に浮く様をみるのは新鮮でした。 セッションでも、Droneをどうメディアに活かすのか、映画を制作するのに活かすのか、などのテーマも見受けられました。 私の予測としては、来年にはより法規制をどうするのか、プライバシーはどうするのかといった側面がハイライトされていくのではないかと思います。(今年もそういった話は出始めていました) 逆に昨年にくらべ下火だったのは? ■ クラウドファンディング 去年は、KickstarterやIndiegogoがきていたし、Indiegogoに至ってはメイン会場のすぐ隣の目立つ場所で、イベントハウスを開催していました。これらのクラウドファンディングに勢いがすごくある感じがしたのですが、今年はさっぱり陰も形もない感じでした。(もちろんいくつかはセッションがありましたが、去年とは雲泥の差です。) ■ Bitcoin 2014年はBitcoinがアツかったのですが、こちらも下火な印象。 去年はBitcoinのATMも出ていましたし、Meetupも複数あり、Bitcoin関連のセッションもかなり多かったように思います。今年は、いくつかはセッションもあるけれど、だいぶトレンドが去った雰囲気だったと言えるでしょう。 一般に認知され、広がっていったテーマはSXSWではもう旬をすぎた扱いとなるのでしょうか。むしろ、その先に進み「Blockchain(ブロックチェーン)」や「Ethereum(イーサリアム)」といった言葉で紹介されていたりしました。 より、Bitcoin自体の話を超えて暗号化やセキュリティの話に中心が移っていったように感じます。 ■ Community Manager 去年はCommunity Managerの役割に注目があつまっていました。 いくつかCommunity Managerを集めたパネルディスカッションが開かれていたり、その他のセッションでも「Community Managerがいることが重要」といった話がでてきたりしていました。 一方、今年はさっぱり。あんなに去年参加していたCommunity Managerたちはどこにいったんだろうという印象でした。「こういうRoleが必要だよね」的ディスカッションには、やはり動きの速いトレンドがあるのでしょうか。 ■ 3Dプリンター 私にとっては今回のSXSW2015で最も面白かったのは「3D Bioprinting」という3Dプリンターで臓器をつくるというセッションだったのですが、全体としては去年に比べると下火感は否めないと感じました。 去年は、ロビーで3Dプリンターがずっと動いていたり、Shapeways CEOのセッションがあったり、あっちこっちで3Dプリンターの話があったけれど、今年はそこまでではなかった印象です。 最近も3Dプリンター3大メーカーの株価が伸び悩んでいるという記事もでていましたし(売上げ高成長率は堅調ではあるものの)、少しこの分野の発展に間延び感があるような気がします。 まとめ:SXSW = 最先端で起こっているトレンドがわかる SXSWに参加する目的、それは「今、最先端では何が一番HOTなのか」を直接肌で感じられるということです。 2014年に初めて参加してみて、それを強く意識しました。 例えば、どの分野が注目をあびているのか、何が一番今問題になっているのか、どういう方向に進みそうなのか、自分の感じている課題感とその分野の専門家は同じことを考えているのか、・・・等々。 そういった感覚を研ぎすますことでトレンドに振り回されるのではなく、トレンドを先取りすることができるようになるのです。 SXSWはそんな嗅覚を磨くために存在するとも言えるでしょう。 Tweet Author: Kazuyo Nakatani 中谷和世 Kazuyo Nakatani: 音楽大学声楽科卒業後、留学斡旋企業の営業/マーケティングを担当。その後、USへ渡り2007年にミシガン大学MBA取得。2007年〜2012年P&GにてSK-IIのマーケティングに従事する。うち3年はシンガポールに駐在。現在は東京在住、オンライン動画配信ビジネスのMarketing Directorを勤める。 Prev Blog Next 2015年3月29日
SXSW2015にみる最先端テクノロジートレンド
今年もお休みをとって、SXSWに行ってきました!3月13日〜17日に開催されたインタラクティブの模様をレポートします。
SXSWとは?
SXSW(”South by South West”)とは、毎年3月にテキサス州オースティンで開催される、IT・映画・音楽の巨大フェスティバルです。
元々は1987年に音楽フェスとして始まったらしいのですが、年々参加人数が増え続けているとのことで、開催期間は街が究極のカオスと化します。
参加者はインタラクティブと呼ばれるIT部門だけで、なんと82カ国から32,798人、3部門合わせると8万人を超えるとのことです。
私自身、2014年に初めてSXSWに参加し、そのカオスを満喫(?)。とにかく大混雑の中に身を置くだけでも大変でしたが、ここで得られるエネルギーと知識の大きさは、他では得られないのです。2014のSXSW終了直後には、あんなカオスな場所もう行かない!と思ったはずなのに、また1年たつと戻りたくなる、そんな中毒性のある場所です。
開催されたセッションの数はインタラクティブだけで、なんと合計1,100。(1,100ですよ、1,100!5日間だけなのに!)1,100のテーマを見るだけで、今、テクノロジーの最先端では何が注目されているのかがわかるのです。去年と比較して、今年のトレンドはどこへ向かっているのか、レポートします。
注)とはいえ、1人が出席できるセッションの数は、どんなに頑張っても最大30そこそこ。3%にも満たないので、以下あくまでも、「私の経験したSXSW」というバイアスが含まれることをご了承ください。
今年、HOTな領域は何だったのか?
■ IoT(Internet of Things、つまり「もののインターネット」)
今回、何よりもまず目立っていたのは、IoT関連。今なによりも、その将来性に期待されている領域です。中でも、ネットにつながれた車やIndustrial IoT(工業用)等の話題が多かったように思います。
と同時に、IoTといってもその領域自体が広すぎて、なんとなく定義について話しあっていたり、パネルディスカッションしていてもパネラーの専門領域が異なりすぎてイマイチ話がかみ合ってなかったり、具体化されていない感じも受けました。
それが、IoTの現状なのだなと感じると同時に、おそらく、来年はこれがぐっとフォーカスされてくるのではないかと想像します。
■ VR(バーチャルリアリティ)・AR(オーギュメンティッドリアリティ)
日本での最近のOculusの盛り上がりと同じく、SXSWでもVR・ARはとても勢いのある分野でした。
特にゲームショーでのOculusの活用ぶりはとにかく圧巻。どこもかしこもOculusという光景でした。
まだまだVR酔い(=バーチャルリアリティ体験後は車酔いのように気持ち悪くなることがあります)の問題を抱えていることから、ゲームの活用は数分が限界ということ。
そんな中でも、今後の可能性から、ゲームディベロッパーがOculusを取り入れようとしている熱意を感じました。
ただ、さすがはSXSW。一般に認知されるようになった内容にとどまらず、セッションで語られる内容はその先を行っていました。
まず、Holo系のARのトピックが多かったということ。これはやはり、最近のMicrosoftのHoloLensの発表による影響でしょう。
また、VRネタでも、セッションにおいては「今後VRをどう活用していくのか」という内容にまで踏み込んでいました。
例えば、「360度映画を撮影する上での手法」とか「音楽産業にVRを活用するには」とか「ポルノのためのVR」とか。そして、「もっと気軽にVRを使ってもらうためには?」などというトピックも。ヘッドマウントディスプレイを一般ユーザーが気軽にゲーム等するときに身につけるようなレベルにまで浸透させるには、あと一歩足りないという自覚もあり、その課題解決についてのディスカッションもありました。
■ Media
これも去年に比べると圧倒的にトレンドとなっていました。なにより、Media関連のセッションがとても増えた気がします。やはり、去年のNYTレポートリーク事件の影響からか、USにおけるニュースメディアの大きな危機感を感じます。具体的には、BuzzFeedやNYTのようなニュースメディアのディスカッションが目立っていたように思います。
また、近年のコンテンツマーケティングの盛り上がりを反映してコンテンツ制作についてのセッションも。私は参加できませんでしたが、GEにコンテンツマーケティングを取り込み成功させたことで有名なLinda Boff氏も登壇していました。
他には、TVやソーシャルメディアとの関連性などのトピックもちょこちょこ。こういったテーマは従来AdTechなどではよく取り上げられるものの、昨年のSXSWではあまり見かけなかったように思います。これも、メディア業界の危機感からきているのかもしれません。
■ AI(人工知能)
AIの領域は、近年ぐっと開発がすすんでいるからか、これも去年からすると注目度が大きく上がった気がします。
去年は、さほどAI関連のテーマを目にしなかった気がするのですが(私の興味がよりAIに対して強くなってきたというバイアスを抜きにしても)今年は重要テーマ扱いされているように思いました。
最近オンエアのあったNHKスペシャルの「ネクストワールド」でも紹介されたBina48という人工知能のクローンを作っている Martine Rothblattがキーノートスピーカーとして登壇していました。
「我々が望む望まないに関わらず、人工知能が発展し自我を持つような時代はやってくる」と話しているのが印象的でした。
■ Drone
今年になって新たに登場したのがDrone 。
かなり小さなものがすごいスピードで飛び回るのや、自分の手の上で宙に浮く様をみるのは新鮮でした。
セッションでも、Droneをどうメディアに活かすのか、映画を制作するのに活かすのか、などのテーマも見受けられました。
私の予測としては、来年にはより法規制をどうするのか、プライバシーはどうするのかといった側面がハイライトされていくのではないかと思います。(今年もそういった話は出始めていました)
逆に昨年にくらべ下火だったのは?
■ クラウドファンディング
去年は、KickstarterやIndiegogoがきていたし、Indiegogoに至ってはメイン会場のすぐ隣の目立つ場所で、イベントハウスを開催していました。これらのクラウドファンディングに勢いがすごくある感じがしたのですが、今年はさっぱり陰も形もない感じでした。(もちろんいくつかはセッションがありましたが、去年とは雲泥の差です。)
■ Bitcoin
2014年はBitcoinがアツかったのですが、こちらも下火な印象。
去年はBitcoinのATMも出ていましたし、Meetupも複数あり、Bitcoin関連のセッションもかなり多かったように思います。今年は、いくつかはセッションもあるけれど、だいぶトレンドが去った雰囲気だったと言えるでしょう。
一般に認知され、広がっていったテーマはSXSWではもう旬をすぎた扱いとなるのでしょうか。むしろ、その先に進み「Blockchain(ブロックチェーン)」や「Ethereum(イーサリアム)」といった言葉で紹介されていたりしました。
より、Bitcoin自体の話を超えて暗号化やセキュリティの話に中心が移っていったように感じます。
■ Community Manager
去年はCommunity Managerの役割に注目があつまっていました。
いくつかCommunity Managerを集めたパネルディスカッションが開かれていたり、その他のセッションでも「Community Managerがいることが重要」といった話がでてきたりしていました。
一方、今年はさっぱり。あんなに去年参加していたCommunity Managerたちはどこにいったんだろうという印象でした。「こういうRoleが必要だよね」的ディスカッションには、やはり動きの速いトレンドがあるのでしょうか。
■ 3Dプリンター
私にとっては今回のSXSW2015で最も面白かったのは「3D Bioprinting」という3Dプリンターで臓器をつくるというセッションだったのですが、全体としては去年に比べると下火感は否めないと感じました。
去年は、ロビーで3Dプリンターがずっと動いていたり、Shapeways CEOのセッションがあったり、あっちこっちで3Dプリンターの話があったけれど、今年はそこまでではなかった印象です。
最近も3Dプリンター3大メーカーの株価が伸び悩んでいるという記事もでていましたし(売上げ高成長率は堅調ではあるものの)、少しこの分野の発展に間延び感があるような気がします。
まとめ:SXSW = 最先端で起こっているトレンドがわかる
SXSWに参加する目的、それは「今、最先端では何が一番HOTなのか」を直接肌で感じられるということです。 2014年に初めて参加してみて、それを強く意識しました。
例えば、どの分野が注目をあびているのか、何が一番今問題になっているのか、どういう方向に進みそうなのか、自分の感じている課題感とその分野の専門家は同じことを考えているのか、・・・等々。
そういった感覚を研ぎすますことでトレンドに振り回されるのではなく、トレンドを先取りすることができるようになるのです。 SXSWはそんな嗅覚を磨くために存在するとも言えるでしょう。