リークされた極秘レポートに見るニューヨークタイムズの危機感(1) Webマーケティング Tweet 先日、ニューヨークタイムズ社内の誰かがリークし、出回っていたニューヨーク・タイムズ(NYT)の極秘レポート。 97ページ(!)からなるこの恐ろしく詳細なレポートは、イノベーションチームが6ヶ月に渡ってNYTの今後のデジタル戦略についてまとめたものでした。しかも、このチームを率いるのは、会長の息子であるArthur Gregg Sulzberger氏。NYTの気合いの入れようがわかります。 全文読み込んでみると、今、目まぐるしい変化のまっただ中にあるメディア業界で、NYTがどう生き抜くべきかという強烈な危機感を抱いているのが伝わってきました。 「破壊的テクノロジー」が、今まさに起こっている まず最初に彼らの危機感が伝わってきたのは、冒頭の「破壊的テクノロジー」に触れるくだり。 ハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセン氏が「イノベーションのジレンマ」の中で提唱した「破壊的テクノロジー」を持ち出し、まさにこれが今、メディア業界で起こっていることだと、自分たちがイノベーターたる競合に飲み込まれつつある状況に警鐘を鳴らしています。 まさに、レポートの中では「破壊的テクノロジー」を右図のように示しています。(レポートp.16) 1) まず、既存プレイヤー(青)は時間をかけクオリティを上げてきた、前を行く存在です。 2) その後、経験も浅い業界のアウトサイダー(赤)によるクオリティの悪い製品が安く出現しますが、既存プレイヤーにとっては脅威に映りません。 3)ただ、新しいテクノロジーによって徐々にアウトサイダーが改善を繰り返した結果、あるとき突然、そのクオリティが許容できるレベルに達します。そして、一瞬にして既存プレイヤーのシェアを奪うのです。 この理論を持ち出すということは、つまり、由緒正しきメディア業界の王者ともあろうNYTが、「やばい」「今まで甘く見ていた競合に、一気にやられる」と、イノベーターである競合の脅威を認めたということなのです。 脅威となるイノベーターは誰か そういった特徴をもつ、まさに今メディア業界を飲み込もうとしているイノベーターは一体、誰なのか?NYTは以下の競合をイノベーターとして挙げています。(レポートp.18-20) BUZZFEED アグレッシブなソーシャルメディアでの拡散とシェアしたくなるコンテンツ制作でバイラル性を追求しているのが特徴 CIRCA モバイルに最適化された箇条書きのサマリーとアップデートを知らせてくれるプッシュ機能が特徴 ESPN ビデオやオーディを活用したり、スポーツのスコアを知らせるアラート機能など、デジタルならではの機能を拡大しているのが特徴 FIRST LOOK MEDIA eBayの共同創業者の出資により有名なジャーナリストを囲い込んで取り上げる硬派なトピックが特徴 FLIPBOARD スマホ・タブレットで見れるよう様々なパブリッシャーより記事を集める。美しいUIも特徴 THE GUARDIAN スノーデンに関し早くに取り上げたデジタル特化型メディア。広くオンラインで読者にリーチするのが特徴 THE HUFFINGTON POST 自由にコメントできる仕組みやSEO/ソーシャルメディアでの拡散が特徴 LINKEDIN 2013年にPulseを買収しパブリッシャー業に参入。インフルエンサーがオリジナルコンテンツを投稿するのが特徴 MEDIUM Twitter 元CEO創始による、ユーザー投稿のプラットフォーム。Mediumのエディトリアルチームがキュレーションするのが特徴 QUARTZ ネイティブアプリを使わないでサイトをモバイル最適化させ、ニュースレターで読者を増やすのが特徴 VOX スポーツ・テクノロジー・不動産・ゲーム・ファッション等、幅広いトピックをカバー。ファンコミュニティが強いことも特徴。 YAHOO NEWS ジャーナリストの採用強化により拡大中。スマホアプリにより1日2回のトップ8ダイジェストニュースを配信し始めた。 どの競合の特徴にも、デジタル時代特有の「モバイル」「ソーシャルメディア」などのキーワードが並んでいます。NYTが焦りを感じるのももっともです。 では、具体的にはどうしたらいいのでしょうか?このレポートの恐ろしいところは、問題提起だけでなくアクションプランに関しても、妥協なくしっかりと網羅しているところです。 次回、第2弾では、NYTがこれらのイノベーターに対し、今何をすべきと考えているか、レポートで提案されているアクションプランをご紹介します。ぜひご覧ください。→ リークされた極秘レポートに見るニューヨークタイムズの危機感(2) 参考:オリジナルレポート The Full New York Times Innovation Report 写真:Flickr Creative Commons画像 (http://www.flickr.com/photos/sarihuella/4670044378/) Tweet Author: Kazuyo Nakatani 中谷和世 Kazuyo Nakatani: 音楽大学声楽科卒業後、留学斡旋企業の営業/マーケティングを担当。その後、USへ渡り2007年にミシガン大学MBA取得。2007年〜2012年P&GにてSK-IIのマーケティングに従事する。うち3年はシンガポールに駐在。現在は東京在住、オンライン動画配信ビジネスのMarketing Directorを勤める。 Prev Blog Next 2014年6月6日
リークされた極秘レポートに見るニューヨークタイムズの危機感(1)
先日、ニューヨークタイムズ社内の誰かがリークし、出回っていたニューヨーク・タイムズ(NYT)の極秘レポート。
97ページ(!)からなるこの恐ろしく詳細なレポートは、イノベーションチームが6ヶ月に渡ってNYTの今後のデジタル戦略についてまとめたものでした。しかも、このチームを率いるのは、会長の息子であるArthur Gregg Sulzberger氏。NYTの気合いの入れようがわかります。
全文読み込んでみると、今、目まぐるしい変化のまっただ中にあるメディア業界で、NYTがどう生き抜くべきかという強烈な危機感を抱いているのが伝わってきました。
「破壊的テクノロジー」が、今まさに起こっている
まず最初に彼らの危機感が伝わってきたのは、冒頭の「破壊的テクノロジー」に触れるくだり。
ハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセン氏が「イノベーションのジレンマ」の中で提唱した「破壊的テクノロジー」を持ち出し、まさにこれが今、メディア業界で起こっていることだと、自分たちがイノベーターたる競合に飲み込まれつつある状況に警鐘を鳴らしています。
まさに、レポートの中では「破壊的テクノロジー」を右図のように示しています。(レポートp.16)
1) まず、既存プレイヤー(青)は時間をかけクオリティを上げてきた、前を行く存在です。
2) その後、経験も浅い業界のアウトサイダー(赤)によるクオリティの悪い製品が安く出現しますが、既存プレイヤーにとっては脅威に映りません。
3)ただ、新しいテクノロジーによって徐々にアウトサイダーが改善を繰り返した結果、あるとき突然、そのクオリティが許容できるレベルに達します。そして、一瞬にして既存プレイヤーのシェアを奪うのです。
この理論を持ち出すということは、つまり、由緒正しきメディア業界の王者ともあろうNYTが、「やばい」「今まで甘く見ていた競合に、一気にやられる」と、イノベーターである競合の脅威を認めたということなのです。
脅威となるイノベーターは誰か
そういった特徴をもつ、まさに今メディア業界を飲み込もうとしているイノベーターは一体、誰なのか?NYTは以下の競合をイノベーターとして挙げています。(レポートp.18-20)
どの競合の特徴にも、デジタル時代特有の「モバイル」「ソーシャルメディア」などのキーワードが並んでいます。NYTが焦りを感じるのももっともです。
では、具体的にはどうしたらいいのでしょうか?このレポートの恐ろしいところは、問題提起だけでなくアクションプランに関しても、妥協なくしっかりと網羅しているところです。
次回、第2弾では、NYTがこれらのイノベーターに対し、今何をすべきと考えているか、レポートで提案されているアクションプランをご紹介します。ぜひご覧ください。→ リークされた極秘レポートに見るニューヨークタイムズの危機感(2)
参考:オリジナルレポート The Full New York Times Innovation Report
写真:Flickr Creative Commons画像 (http://www.flickr.com/photos/sarihuella/4670044378/)