Euro Money Chart

成功するスタートアップの目指すべき”急成長”


 

どのくらい急激に成長すればスタートアップとして成功だと言えるのでしょうか?そのヒントとなるのが、USのメンロパークに本拠地を置くベンチャーキャピタルIVPが 行った上場を果たしたスタートアップ70社のリサーチに関する記事です。執筆者のJules MaltzParsa Saljoughianから翻訳許可をもらうことができたのでご紹介します。


 

Euro Money Chartどれほど急激に企業は成長するべきか?

ポール・グレアム(Paul Graham) は、スタートアップとは「急成長企業としてデザインされた企業」であり、ファウンダーは常に成長率を測るべきだ、という素晴らしい記事を書いた。 Y Combinator では、良好な成長率は、週に5~7%、例外的に秀でている場合には週に10%であると、ポールは指摘している。

しかし、10%の成長が永遠に続くわけではない。もしそんな成長が続けば、結果は恐ろしいことになる。毎週100ドルを売り上げ、10%/週の成長率を打ち出したとすれば、わずか3年で年間売上高150億ドルの成長を遂げることとなる。GoogleやFacebookでさえ、ここまでの急成長はなかった。誰しも規模が大きくなると簡単には成長できなくなるものだ。

スタートアップの成功がすべて成長率にかかっているのであれば、一体どれだけの成長をすれば十分だと言えるのだろう?

私たちはIVPで、まさにこの疑問を研究した。2010年以降に上場したインターネット、及びソフトウェア関連企業に関するデータを引っ張り出し、上場前4年間の各企業の成長率と、上場したその年の成長率の履歴をトラッキングした。リストの中の70企業のいくつか(例えば、グルーポン)は、最初は信じられないほど急成長したが、大きくなるにつれ地球に引き戻されるロケットのように徐々に成長がスローダウンしていった。他の企業(例えばHomeAway)は、始めは緩やかに成長したが、上場以降もその成長率を維持した。


それぞれの企業や市場は異なるため、それぞれの成長率の中央値を売上げに応じてグラフ化した。(以下のグラフ参照)

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上の図でもわかるように、もし上場を狙うのであれば、売上げが少なければ少ないほど、急な成長を求められる。 0ドル~2500万ドル売上げの中間値企業は、なんと133%の成長率だ。対し、1.5億ドル~5億ドルの規模になると、年間38%という緩やかな速度での成長となる。

さらに、最も華々しいIPOを遂げた企業(Tableau、Workday、Splunk、ServiceNow、Marketo*、LinkedIn等)は、上場前には上記以上の成長率を達成してした。思った通り、これらの企業のIPO時の売上マルチプル(企業価値÷売上:ベンチャーの企業価値計算でよく使われる)は7.3倍と有意に高かった。逆に、年間の各中央値ベンチマーク以下の成長率を持つ企業の売上マルチプルは、3.8倍にとどまった。

また、これ以外にも以下のことがわかった。

20%以上の成長率を目指せ

急成長しなければ上場は果たせない。我々が調査した70の上場企業のうちの69社は、上場の年に年率20%以上の成長を達成しており、うち54社はなんと30%以上の成長をしていた。

すべての売上げが同じではない

売上高や成長率と同じくらい売上げの質は重要。 我々のデータの中で上場の際に最も評価された企業は、予測可能な収益源、高粗利益率と低い顧客流出率を誇っていた。こういった企業は、一般的にサービスやその他目先だけの収入を避けている。

急成長は上場後も重要

我々は、上場前の企業データ収集に特化して分析しているが、これはすでに上場している企業にも当てはまる。 2011年5月に上場したLinkedInは、当時40億ドルで評価された。それ以来、10億ドル以上の売上げ、86%の年間成長率、と、我々の分析対象の成功したスタートアップを大幅に超える成長を遂げた。その結果、同社は、現在260億ドルもの評価を受けている。


どうでしょうか?年率20%、30%もしくは100%以上なんて半端なく高いゴールに思えますが、彼らがまとめた分析データを見ると実感が湧きます。このように成功事例から目指すべき高みが具体的に見えることで、日本からもどんどんスタートアップが世界に羽ばたいていって欲しいと思います。

 

原文:How Fast Should You Be Growing?


Author: Kazuyo Nakatani 中谷和世 Kazuyo Nakatani: 音楽大学声楽科卒業後、留学斡旋企業の営業/マーケティングを担当。その後、USへ渡り2007年にミシガン大学MBA取得。2007年〜2012年P&GにてSK-IIのマーケティングに従事する。うち3年はシンガポールに駐在。現在は東京在住、オンライン動画配信ビジネスのMarketing Directorを勤める。