CESレポート(1): HTC Viveが牽引するVRの進化 セミナー&カンファレンス Tweet 今回、前々から気になっていたCESに初めて参加してきました。 CESとは CESとは、世界最大級の国際家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」。「家電」といっても、今やソフトウェアやテクノロジーサービスも数多く紹介され、「もう家電とは言えない」とオープニングキーノートでCESのオーガナイザーであるGary Shapiroが宣言しているほど、テクノロジー全てを網羅するショーとなっています。今年は、ラスベガスで2016年1月6日(水)~1月9日(土)に開催され、17万人もの人が参加したとのこと。そんなカオスの中での収穫をレポートします。 VRがアツい! 今回、CESの中でのひときわ存在感を際立たせていたのはVR(バーチャル・リアリティ)でした。今までもSXSWなどでVRには注目してきましたが、今回は大きく前進した感がありました。 $599するOculusの一般向け製品の予約がCESと同時に開始したこともあり、Oculusブースは大盛況。あまりの列の長さにOculusブースは断念しましたが、VRに対する注目度はかなり高いということを肌で感じられる光景でした。 HTC Viveの威力 ただ、今回なによりも私が興奮したのは、HTCのViveです。台湾のHTC社がUSのビデオゲーム会社Valve社と共同開発し昨年発表したこのデバイスにより、VR体験において可能なことがぐっと広がった感があります。従来は不可能だった、自分の意思で、前進したりかがんだりといった上下左右の動きが自在にできるようになったことで、バーチャルな空間に自分がいるというリアルな感覚を持てるようになりました。 私がそれを体感し、その自由度や世界観に最も感動したVR体験が、Dassault Systemesのブースで行われていた「#3DEXPERIENCE Dream」というもの。要は、HTC Viveで3D空間に絵が描けるというコンセプトです。流れとしては、(1)まずキネクトで自分の体をスキャン、(2)その後、HTC Viveのコンソールを使ってその周りに絵を描いていく、というデモを1人5分程度ずつ体験するというものでした。 具体的には以下の動画をご覧ください。こちらの男性が両手にコンソールを持ち、動き回っています。まさに彼はHTC Viveの世界の中で3Dで彫刻を作るかのように絵を描いている真っ最中です。 彼が実際に見ている世界はこのようなものです。(この動画は、モニターに映し出された映像を撮ったものです)白いドレープや頭の上にある虹のようなイラストは彼が描いたもので、周囲をふわふわと動き回っているパレットは彼がコンソールで操作しているものです。 以下はこのブースで同様に絵を描いた人たちの作品です。まさに「#3DEXPERIENCE Dream」というテーマのとおり、1人1人の夢が詰まった作品になっていますよね! 実は、私も最後に少しだけデモ体験させて頂きました。絵心がないからか(笑)閉館前で焦って描いたからか、改善の余地アリの作品ですが、以下ご参考までに。この真っ青な世界の中での作業は実際に体験するとかなり感動するものでした。また、こちらのサイトにCESでデモを体験した112名全員の作品がアップされていますので、興味があれば覗いてみてください。 VRのすごさ、特にこのHTC Viveのリアルさは、言葉で表現するのが難しいのですが、本当に現実の世界でDIYでものを作っているかのような錯覚に陥るのです。この自分の意思のままにうごき、操作できるという感覚は、VRのレベルをまた1つ押し上げたと感じました。 Googleの提供するTilt Brush 実は、GoogleもTilt Brushという3D空間で絵を描くことのできるアプリを昨年4月に買収し、似たようなサービスを提供しています。こちらはHTC ViveのコンテンツプラットフォームSteamで誰にでも利用が可能です。(もちろん、HTC Viveが揃っていることが前提ですが) 今回、このTilt Brushも試すことができました。私が描いたものがこちらです。リボンの帯のような線で描く設定だったため、季節外れなクリスマスツリーとトルソーの周りを線でなぞるようにして描いたドレスです。慣れないながらもこういったものが10分もしないで簡単に描けるのは本当にワクワクする体験でした。 この他にも、HTC Viveを使ってホラー映画を見たり、Google Earthでテレポート体験をしたり・・・重要なのは、自分の意思でバーチャルな世界を動き回れると体験の幅がぐっと広がるということです。 例えば、ホラー映画でも、従来の映画であれば、スクリーンで何を見るか、そこで何が起こるのかは映画プロデューサーの判断に任されていました。ところが、VRであれば、バーチャルなホラーの世界で気配を感じたときに後ろを振り向くのか振り向かないのかは自分次第なのです。怪奇現象で何かが飛んできても、それを避けるのは自分。ただ座って映画を見てるよりも、何倍も恐怖は大きく異なります。 ゲームとVRの融合 こういったリアリティを追求したVRの応用が最も期待されている分野がゲームです。ゲームディベロッパーがこぞってVRを活かしたゲームの開発を進めていることは言わずもがなな事実です。CESでも、2名で撃ち合うShootingゲームやコンソールを使って障害物や敵を倒すゲームなど多々デモが行われていました。 VR酔いが大きく改善 1点驚いたのは、VR酔いの軽減が大きく進歩していたことです。ご存じのとおり、VRは酔います。車酔いのような症状で、30分ほどVR体験をすると、私の場合、次の日は1日中頭痛がしたり気分が悪くなったりしていました。しかし、今回1日中あらゆるVRデモを試したにも関わらず、さほどVR酔いが起こらなかったのには驚きました。 VR酔いが起こる理由は研究が進んでいますが諸説あるようで、今回CESで私があらゆるブースで断片的に聞いた結果では以下のような要素があるとのことです。(これ以外にも複雑に諸要素があると思いますが) 解像度:見ている画像が鮮明でない場合にリアルとの差を感じ酔いを感じる Latency:頭を動かし見ている方向が変わる際に、映像が遅れることから酔いを感じる 磁位:視覚からはいってくる「自分が今どこにいるか」の情報と、体感するそれとの差から酔いを感じる 左右の映像の独立性:人間の目は左右離れているため見えている映像が少し異なるため、左右同じ映像を見せると酔いを感じる また、こちらはIonVRというスタートアップが開発したVR酔いを軽減したというヘッドセット。どのように工夫しているのかは企業秘密だそうです。 大御所Oculus、スマホ合体版では一歩先を行っている感のあるGearVR、「100以上のタイトルが開発中」と言われゲームとの融合では有利といわれているPlayStation VR、そして今回の大目玉だったHTC Viveも今年コンシューマー版を出すと言われています。今年はVRが大きく動く年になりそうです。 HTC Vive写真:Wilipedia Creative Commons画像 (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:HTC_Vive_(3).jpg) Tweet Author: Kazuyo Nakatani 中谷和世 Kazuyo Nakatani: 音楽大学声楽科卒業後、留学斡旋企業の営業/マーケティングを担当。その後、USへ渡り2007年にミシガン大学MBA取得。2007年〜2012年P&GにてSK-IIのマーケティングに従事する。うち3年はシンガポールに駐在。現在は東京在住、オンライン動画配信ビジネスのMarketing Directorを勤める。 Prev Blog Next 2016年1月25日
CESレポート(1): HTC Viveが牽引するVRの進化
今回、前々から気になっていたCESに初めて参加してきました。
CESとは
CESとは、世界最大級の国際家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」。「家電」といっても、今やソフトウェアやテクノロジーサービスも数多く紹介され、「もう家電とは言えない」とオープニングキーノートでCESのオーガナイザーであるGary Shapiroが宣言しているほど、テクノロジー全てを網羅するショーとなっています。今年は、ラスベガスで2016年1月6日(水)~1月9日(土)に開催され、17万人もの人が参加したとのこと。そんなカオスの中での収穫をレポートします。
VRがアツい!
今回、CESの中でのひときわ存在感を際立たせていたのはVR(バーチャル・リアリティ)でした。今までもSXSWなどでVRには注目してきましたが、今回は大きく前進した感がありました。
$599するOculusの一般向け製品の予約がCESと同時に開始したこともあり、Oculusブースは大盛況。あまりの列の長さにOculusブースは断念しましたが、VRに対する注目度はかなり高いということを肌で感じられる光景でした。
HTC Viveの威力
ただ、今回なによりも私が興奮したのは、HTCのViveです。台湾のHTC社がUSのビデオゲーム会社Valve社と共同開発し昨年発表したこのデバイスにより、VR体験において可能なことがぐっと広がった感があります。従来は不可能だった、自分の意思で、前進したりかがんだりといった上下左右の動きが自在にできるようになったことで、バーチャルな空間に自分がいるというリアルな感覚を持てるようになりました。
私がそれを体感し、その自由度や世界観に最も感動したVR体験が、Dassault Systemesのブースで行われていた「#3DEXPERIENCE Dream」というもの。要は、HTC Viveで3D空間に絵が描けるというコンセプトです。流れとしては、(1)まずキネクトで自分の体をスキャン、(2)その後、HTC Viveのコンソールを使ってその周りに絵を描いていく、というデモを1人5分程度ずつ体験するというものでした。
具体的には以下の動画をご覧ください。こちらの男性が両手にコンソールを持ち、動き回っています。まさに彼はHTC Viveの世界の中で3Dで彫刻を作るかのように絵を描いている真っ最中です。
彼が実際に見ている世界はこのようなものです。(この動画は、モニターに映し出された映像を撮ったものです)白いドレープや頭の上にある虹のようなイラストは彼が描いたもので、周囲をふわふわと動き回っているパレットは彼がコンソールで操作しているものです。
以下はこのブースで同様に絵を描いた人たちの作品です。まさに「#3DEXPERIENCE Dream」というテーマのとおり、1人1人の夢が詰まった作品になっていますよね!
実は、私も最後に少しだけデモ体験させて頂きました。絵心がないからか(笑)閉館前で焦って描いたからか、改善の余地アリの作品ですが、以下ご参考までに。この真っ青な世界の中での作業は実際に体験するとかなり感動するものでした。また、こちらのサイトにCESでデモを体験した112名全員の作品がアップされていますので、興味があれば覗いてみてください。
VRのすごさ、特にこのHTC Viveのリアルさは、言葉で表現するのが難しいのですが、本当に現実の世界でDIYでものを作っているかのような錯覚に陥るのです。この自分の意思のままにうごき、操作できるという感覚は、VRのレベルをまた1つ押し上げたと感じました。
Googleの提供するTilt Brush
実は、GoogleもTilt Brushという3D空間で絵を描くことのできるアプリを昨年4月に買収し、似たようなサービスを提供しています。こちらはHTC ViveのコンテンツプラットフォームSteamで誰にでも利用が可能です。(もちろん、HTC Viveが揃っていることが前提ですが)
今回、このTilt Brushも試すことができました。私が描いたものがこちらです。リボンの帯のような線で描く設定だったため、季節外れなクリスマスツリーとトルソーの周りを線でなぞるようにして描いたドレスです。慣れないながらもこういったものが10分もしないで簡単に描けるのは本当にワクワクする体験でした。
この他にも、HTC Viveを使ってホラー映画を見たり、Google Earthでテレポート体験をしたり・・・重要なのは、自分の意思でバーチャルな世界を動き回れると体験の幅がぐっと広がるということです。
例えば、ホラー映画でも、従来の映画であれば、スクリーンで何を見るか、そこで何が起こるのかは映画プロデューサーの判断に任されていました。ところが、VRであれば、バーチャルなホラーの世界で気配を感じたときに後ろを振り向くのか振り向かないのかは自分次第なのです。怪奇現象で何かが飛んできても、それを避けるのは自分。ただ座って映画を見てるよりも、何倍も恐怖は大きく異なります。
ゲームとVRの融合
こういったリアリティを追求したVRの応用が最も期待されている分野がゲームです。ゲームディベロッパーがこぞってVRを活かしたゲームの開発を進めていることは言わずもがなな事実です。CESでも、2名で撃ち合うShootingゲームやコンソールを使って障害物や敵を倒すゲームなど多々デモが行われていました。
VR酔いが大きく改善
1点驚いたのは、VR酔いの軽減が大きく進歩していたことです。ご存じのとおり、VRは酔います。車酔いのような症状で、30分ほどVR体験をすると、私の場合、次の日は1日中頭痛がしたり気分が悪くなったりしていました。しかし、今回1日中あらゆるVRデモを試したにも関わらず、さほどVR酔いが起こらなかったのには驚きました。
VR酔いが起こる理由は研究が進んでいますが諸説あるようで、今回CESで私があらゆるブースで断片的に聞いた結果では以下のような要素があるとのことです。(これ以外にも複雑に諸要素があると思いますが)
また、こちらはIonVRというスタートアップが開発したVR酔いを軽減したというヘッドセット。どのように工夫しているのかは企業秘密だそうです。
大御所Oculus、スマホ合体版では一歩先を行っている感のあるGearVR、「100以上のタイトルが開発中」と言われゲームとの融合では有利といわれているPlayStation VR、そして今回の大目玉だったHTC Viveも今年コンシューマー版を出すと言われています。今年はVRが大きく動く年になりそうです。
HTC Vive写真:Wilipedia Creative Commons画像 (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:HTC_Vive_(3).jpg)