不可能を可能にする3Dプリンター4つの事例 3Dプリンター Tweet 「3Dプリンターってまだまだ『ちょっと便利』を超えてないよね」 そんなコメントを少し前に友人から聞きました。真に社会的インパクトのある活用はされていないのではないか、というのです。 実際、先日参加したMaker Fairでも、StratasysやAutodeskなどの大手3Dプリンターメーカーがブースを出し、スマホケースなどのサンプルを並べていましたが、それが3Dプリンターのイメージだという方も多いのではないかと思います。 以下はForbesが2012年に出した3Dプリンター実用化の進捗図です。 日頃目にするのは、左下の「クラフト&ホビー」くらいですが、実はすでに、3Dプリンターで作った詰め物や入れ歯を歯の治療の際に使ったり、航空機エンジンの部品を3Dプリンターで生産したりといったことは実用化されています。(GEがドイツで3Dプリンターのエンジン部品生産をしていることで、ドイツが3Dプリンター利用国第3位となったほどです) 今回は、社会を変える可能性のある3Dプリンターの事例をご紹介したいと思います。実用化はこれからなものの夢のある大きな事例から、すでに実用化されている身近な事例までピックアップしてみました。 3Dプリンターで臓器を作る こちらは、3年も前にTEDで発表された臓器を3Dプリントする試みです。臓器の形を3Dプリンターで作り、その中に細胞を流し込んで臓器を作るという話です。また、そもそも傷をおった場所に直接3Dプリンターをあて人間の体の上から失われた箇所をプリントしていくといった技術を開発しているとのこと! 3年も前の話でここまでのレベルに到達しているということに驚かされますが、まだまだ広く一般に使われるレベルにまでなっていません。 2013年の時点で、4ヶ月生き長らえる腎臓がプリントできるようになったというニュースがありましたが、移植可能なレベルになるにはまだ時間がかかりそうです。今後、必ず飛躍する分野として期待したいですね。 組み立てプログラムを埋め込み3Dプリント こちらは「4Dプリント」という聞き慣れない言葉で紹介されていますが、要はものが自発的に動いて組み立てられるようプログラムされたものを3Dプリントするという方法。例えば月面で何かを組み立てたいといったときに、技術者を送り込んで組み立てるのではなく、自動的に組み立てられるものを3Dプリントし、送るということが可能なのです。 実際、宇宙空間においての3Dプリンターの活用はとても期待されているエリアです。NASAによって、ロケットエンジンの部品生産から宇宙飛行士の食料を3Dプリンターで作るといったことまで研究は進んでいます。ただ、真空空間や温度変化の激しい環境においての耐久性に課題があり、2014年時点ではまだ実用化に至っていないそうです。 上記はこれからの可能性が大きい話ですが、一方ですでに進んでいる身近なケースをご紹介しましょう。 おしゃれな義足カバーを作る 私が感動したのは、このBespoke Innovations。義足カバーを3Dプリンターでおしゃれに作るサービスです。 反対側の健康な足の形をスキャンし、義足を付ける足の形を再現し、カバーを作るというもの。サイトにも、おしゃれな義足をはめてスポーツやアウトドアを楽しんだり、ファッションやもう片方の足のタトゥーと合わせたりする写真が並び、義足を使用する人たちが見せて楽しみたいと思えるようなものになっています。 自分の足にあったインソールを作る こちらは、Solsという自分の足の形にあった靴底を3Dプリントするサービス。 上記の写真のように、模様の入った薄い靴下を履いて写真をとるだけで足裏の形に合わせたインソールを作ってくれます。こういうサービスがあると靴が足の形に合わなくて痛いといった話も、今後減っていくのかもしれません。 最新のStratasysからでてる3Dプリンター(Objet500 Connex3)であれば複数素材の同時プリントや固さの調整ができるので、そのうち3Dプリンターでカスタムメイドされた靴(靴底だけでなく靴自体)が作れるでしょう。「靴ずれ」というもの自体がなくなるなんてことも、夢ではないかもしれませんね。 まとめ どうでしょうか。私は3Dプリンターの可能性は劇的に私たちの生活を変えると思います。特に、以下のような特性においては大きな実力を発揮するのではないでしょうか。 カスタムメイドが必要なもの(例:義足カバーやインソール) 材料や技術をもった人材を派遣することが難しいもの(例:宇宙空間のためのもの) 希少性の高いもの(例:臓器) 本来の3Dプリンターの実力は、小さなおもちゃを作るだけではありません。水面下で進んでいるこういった試みが、これからどんな風に実用化されていくのか、ワクワクしますね! 参考資料: Forbes “How HP Could Reinvent 3D Printing…and Itself” IEC “Aerospace 3D printing takes off” TED, Bespoke Innovations, Sols Tweet Author: Kazuyo Nakatani 中谷和世 Kazuyo Nakatani: 音楽大学声楽科卒業後、留学斡旋企業の営業/マーケティングを担当。その後、USへ渡り2007年にミシガン大学MBA取得。2007年〜2012年P&GにてSK-IIのマーケティングに従事する。うち3年はシンガポールに駐在。現在は東京在住、オンライン動画配信ビジネスのMarketing Directorを勤める。 Prev Blog Next 2014年11月30日
不可能を可能にする3Dプリンター4つの事例
「3Dプリンターってまだまだ『ちょっと便利』を超えてないよね」
そんなコメントを少し前に友人から聞きました。真に社会的インパクトのある活用はされていないのではないか、というのです。
実際、先日参加したMaker Fairでも、StratasysやAutodeskなどの大手3Dプリンターメーカーがブースを出し、スマホケースなどのサンプルを並べていましたが、それが3Dプリンターのイメージだという方も多いのではないかと思います。
以下はForbesが2012年に出した3Dプリンター実用化の進捗図です。
日頃目にするのは、左下の「クラフト&ホビー」くらいですが、実はすでに、3Dプリンターで作った詰め物や入れ歯を歯の治療の際に使ったり、航空機エンジンの部品を3Dプリンターで生産したりといったことは実用化されています。(GEがドイツで3Dプリンターのエンジン部品生産をしていることで、ドイツが3Dプリンター利用国第3位となったほどです)
今回は、社会を変える可能性のある3Dプリンターの事例をご紹介したいと思います。実用化はこれからなものの夢のある大きな事例から、すでに実用化されている身近な事例までピックアップしてみました。
3Dプリンターで臓器を作る
こちらは、3年も前にTEDで発表された臓器を3Dプリントする試みです。臓器の形を3Dプリンターで作り、その中に細胞を流し込んで臓器を作るという話です。また、そもそも傷をおった場所に直接3Dプリンターをあて人間の体の上から失われた箇所をプリントしていくといった技術を開発しているとのこと!
3年も前の話でここまでのレベルに到達しているということに驚かされますが、まだまだ広く一般に使われるレベルにまでなっていません。
2013年の時点で、4ヶ月生き長らえる腎臓がプリントできるようになったというニュースがありましたが、移植可能なレベルになるにはまだ時間がかかりそうです。今後、必ず飛躍する分野として期待したいですね。
組み立てプログラムを埋め込み3Dプリント
おしゃれな義足カバーを作る
自分の足にあったインソールを作る
まとめ
どうでしょうか。私は3Dプリンターの可能性は劇的に私たちの生活を変えると思います。特に、以下のような特性においては大きな実力を発揮するのではないでしょうか。
本来の3Dプリンターの実力は、小さなおもちゃを作るだけではありません。水面下で進んでいるこういった試みが、これからどんな風に実用化されていくのか、ワクワクしますね!
参考資料:
Forbes “How HP Could Reinvent 3D Printing…and Itself”
IEC “Aerospace 3D printing takes off”
TED, Bespoke Innovations, Sols