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ダヴを世界中で大ヒットに導いた真実のインサイト


 

Unilever2 引き続き、5月20-23日に沖縄で開催された iMedia Brand Summitでのもう一つのキーノートスピーチについてまとめます。

Unileverのキーノートスピーチ:「真実のインサイトを見つける」

Unileverの元CMOのSimon Clift氏が”Universal Truth (世界共通の真実)”を見つけ出すことにより成功したプロジェクトの事例を紹介してくれました。ケーススタディとしては大きく2つ。DOVEの「リアル・ビューティー・キャンペーン」とOMO(洗剤ブランド)の「Dirt is Good (汚れはいいこと)キャンペーン」でした。

DOVEの「リアル・ビューティー・キャンペーン」

new_Unilever1本当の美は人それぞれで違う。だからあるがままの自分を認めてあげようといったアイディアです。リサーチで明らかになったのは、自分を美しいと思っている女性はたった2%(日本人は0%!)しかいないということ。世のビューティブランドはみんな完璧なまでの「美女」を広告に使うけれど、結局どれも一緒に見える。そんな中、みんな違っていていいんだよということをDOVEが表現したのです。特に、今までにない方向性をどうやってプロジェクトとして成立させたのかが面白いところでした。経営陣がそれぞれ自分たちの娘に自分の見た目をどう思っているかを聞き出し、ビデオに収めたそうです。それを社内で見た時の感動からこのアイディアが成立したとのこと。それが以下のビデオです。

ここから生み出された実際の広告がこちらです。一見普通の女性が、整形、メイク、画像修正を経て広告として美しく作りあげられていく様を描き「私たちの美の価値観が歪んでいるのも無理はない」と締めくくっています。

OMOの「Dirt is Good (汚れはいいこと)キャンペーン」

汚れることこそが子供の発育を促す。だから、汚れることを恐れずに、といったアイディアです。母親は常に子供の成長を何よりも望んでいる。それなのについつい毎日服をどろんこにして帰ってくる我が子を怒ってしまう。そんな母親の愛情とジレンマの入り交じった心境に応援をこめたキャンペーンです。「Growth stays. Dirt goes(成長は残る。汚れは落ちる)」というコピーが世界中の母親の気持ちにブランドが共感していることを示す絶妙な表現だと思いました。思わずハッとするような一言ですよね。その広告が以下です。

古典的な事例からの学び

この2つの事例は古典的なもので、決して目新しいものではありません。(リアル・ビューティー・キャンペーンは2004年、Dirt is Good (汚れはいいこと)キャンペーンは2007年の事例です。)「インサイトに基づいたマーケティングなんて当たり前」とか「こんな古い事例を今更聞いても」といった不満の声も実際、ちらほらと一部のサミット参加者の中から上がっていました。もちろん、最新事例を学びにきているのは事実なので、古い事例に対する異論は否定しません。しかし、むしろデジタルマーケティングがどんどん進化する今だからこそ、消費者インサイトに根ざしたマーケティングの本質を忘れてはいけないのだと私は思っています。

真実のインサイトを求め続ける

深いインサイトを妥協なく掘り下げるという意味においては、私は前職のP&Gでは恵まれた環境にあったと改めて思います。そのための予算、人的リソース、社内スキル、時間が与えられていました。それは、インサイトの重要性が全社的に認識されているからです。一方で深いインサイトに根ざした施策が必要とされているのはデジタルの世界でも同じだと信じています。ともすれば私たちは日々のアドテクの運用ばかりに気を取られがちですが、消費者のインサイトを大切にしたマーケティングを常に心がけていきたいと思います。


Author: Kazuyo Nakatani 中谷和世 Kazuyo Nakatani: 音楽大学声楽科卒業後、留学斡旋企業の営業/マーケティングを担当。その後、USへ渡り2007年にミシガン大学MBA取得。2007年〜2012年P&GにてSK-IIのマーケティングに従事する。うち3年はシンガポールに駐在。現在は東京在住、オンライン動画配信ビジネスのMarketing Directorを勤める。