Right Left Brain

あなたを思考停止に追い込む右脳信仰の罠


Right Left Brain

最近のトレンドとして「右脳を強化すれば才能が花開く」といった右脳信仰があるのではないでしょうか。右脳こそが全てのスキルを底上げする。右脳が発達している人はすごい。そして、左脳で考える人は凝り固まった発想しかできず実力を発揮できない。しかし、はたして本当にそうなんでしょうか?

売れる曲はルールに基づいて作られている

売れる曲のコード進行というのをご存知ですか?過去にヒットした曲を分析してみるとコード進行にはパターンがあるという話。有名なのはパッヘルベルのカノンで使われているコード進行が売れるパターンの王道です。そして、そこから派生したいくつかの応用編バージョンが存在します。つまり、それらのパターンさえわかっていれば逆にそれにそって売れる曲を作れるというわけです。

AKBだって、宇多田ヒカルだって、そのパターン。小室哲哉にいたっては、ほとんどが “売れるパターン”のコード進行に基づいた作曲です。実際、彼は売れるコード進行のパターンは4つぐらい」と断言しています。そのルールにそった作曲をしていたからこそ、「毎日1曲作る」なんてことも可能になるのです。

才能がなくても作曲はできる

私自身も音大時代に作曲の授業をとりましたが、「作曲なんて、才能もないのにできるわけがない」と不安をもって受けた授業は衝撃的でした。教授の言うがまま、ただ単純なルールに従って書き進めていくと、とりあえず何とか曲らしきものができたのです。ひらめきや先天的な才能がなくても、誰にでも簡単に曲が作れるという驚きの体験でした。

つまりは、人間の感情に訴えかけるコードの展開パターンというものがあり、その進行をきくとなんだか感動してしまう。それさえ分析できていれば、心を揺さぶる曲の再現が可能というわけです。

同じことが他の分野にも言えます。昔から支持されてきた神話のドラマ展開にはパターンがあるそうです。アートだって人間が最も美しいと感じるバランス黄金比が意図的に使われていたりします。

天賦の才能ではなく、左脳で再現可能

実は世の中の「ひらめき」とか「才能」とか言われていることって、ほとんどが左脳でコントロールできるはずだと私は思っています。そして、そのルールさえわかれば誰にでもできるのです。もう「才能がないから」と諦める必要なんてないのです。そして、感覚的なものの「パターン」を把握することで左脳的言語に置き換えて再現可能にすると、スケールが生まれます。つまり、1) 何度でも、2) 誰にでも、再現可能になり、広くビジネスとして応用可能となる訳です。

右脳信仰をやめよう

「右脳を鍛え眠っている才能を目覚めさせる」なんていう自己啓発は、単に「才能がないから無理」と言い訳しつつ諦めきれないことの現れではないでしょうか。その右脳トレーニング、本当に効果がありますか?本当に進歩している実感が湧きますか?そんなことより、アートでも音楽でもその「パターン」を把握し左脳で理解すれば、あなたにもできるかもしれないのに

私は右脳信仰をやめたお陰で、どんな分野でも習得可能な気持ちでトライできるようになったし、クリエイティブな分野に関しても誰とでも建設的にディスカッションできるようになりました。「才能」という言葉でひとくくりにして諦めず、その中身を紐解くことで可能になることはたくさんあると思います。それは、単に右脳と左脳をどううまくバランスよく使うかだけなのだから。

最近の右脳信仰の流れ、あなたはどう考えますか?


Author: Kazuyo Nakatani 中谷和世 Kazuyo Nakatani: 音楽大学声楽科卒業後、留学斡旋企業の営業/マーケティングを担当。その後、USへ渡り2007年にミシガン大学MBA取得。2007年〜2012年P&GにてSK-IIのマーケティングに従事する。うち3年はシンガポールに駐在。現在は東京在住、オンライン動画配信ビジネスのMarketing Directorを勤める。