一方で範囲をデジタルのみに絞った場合、同じような効果測定がアトリビューション分析によって行われています。上記のMMMが大量のデータをまとめて統計分析にかけるのに対し、こちらはリアルタイムで消費者のオンラインでの行動をトラックし、目にしたもの・クリックしたものを把握することで効果測定とその効率化を行うものです。直接購買に結びついた数字だけでなく、その裏にある「以前画面上に現れた広告を見た」(View Through Conversion)、または、「以前広告をクリックした」(Click Through Conversion)といった後々の購買に影響を与える行動履歴も貢献度として数値化されるので、オンライン上の広告効果に関してはかなり正確に計ることができます。リアルタイムにデータを追っていくという特性上、MMMと比べるとコストも時間も比較的リーズナブル。現状、まだまだ本格的にアトリビューションをビジネスに応用できている会社は日本では多くないようですが、USでは本格活用されつつあるので近いうちに日本でも一般化していくのではないでしょうか。
最も効果的なデジタルマーケティングへの予算配分って?
初めにはっきりさせておくと、この文章の中に答えはありません。(すみません。笑)むしろ私自身、どのくらいの予算をデジタルにあて、どのくらいを従来型のメディア(TV、プリント、屋外広告など)にあてるべきなのか、その答えを日々求め続けています。
増え続けるデジタル予算
デジタルの全マーケティング予算に占める割合は年々増加傾向にあり、Forresterの予測によると2016年にはUSでは35%(!)もの予算がデジタルに割り振られることになるそうです。(下記グラフ参照)実際に、USではデジタルに割く予算額は二桁%で過去5年以上もの間増え続けています。一方でマーケティング予算自体は増加傾向にあるにも関わらず、TVなど従来型のマーケティングへの投資は同期間中減り続けているのです。これは、実際のビジネス結果からデジタルマーケティングの効果が見られるからこそ起こっているトレンドなのでしょう。しかし、一体どこまでデジタルを増やせば“最適”な投資だと言えるのでしょうか。
予算配分ポートフォリオ最適化のためのツール
より効果的な予算配分を見極めるためのツールがいくつかあるので、それを紹介します。
1)MMM (Marketing Mix Modeling:https://en.wikipedia.org/wiki/Marketing_mix_modeling)
これは、売上げとマーケティング活動を多変量回帰分析にかけ、各マーケティング施策のROI を計るというもの。実際この分析を行うと、かなり細かく施策ごとの効果が比較可能な状態でわかります。しかも、投資額の大小に応じてのROIの変化までわかるので、それぞれのプランへの投資を増やすべきか減らすべきかの重要な判断指標となるのです。この手法は特に消費材マーケティングでよく用いられ、過去10年使っているP&Gを筆頭にクラフト、コカコーラ、ペプシ、などでも利用され、今では、金融サービス、自動車、医薬品、ホスピタリティなどの業界にも広く取り入れられつつあります。 TVだけに留まらず、デジタル施策やPR、店頭活動に至るまで総合的に計れるこのMMMは全体の効率化にはとても良いのですが、問題はコストと時間。2−3年分の正確なデータを何ヶ月もかけて統計分析にかけるため、数千万円もの予算が必要となるのです。実際、効果分析だけのために、ここまでの時間と予算に余裕のある会社は多くないのではないでしょうか。
2)アトリビューション
一方で範囲をデジタルのみに絞った場合、同じような効果測定がアトリビューション分析によって行われています。上記のMMMが大量のデータをまとめて統計分析にかけるのに対し、こちらはリアルタイムで消費者のオンラインでの行動をトラックし、目にしたもの・クリックしたものを把握することで効果測定とその効率化を行うものです。直接購買に結びついた数字だけでなく、その裏にある「以前画面上に現れた広告を見た」(View Through Conversion)、または、「以前広告をクリックした」(Click Through Conversion)といった後々の購買に影響を与える行動履歴も貢献度として数値化されるので、オンライン上の広告効果に関してはかなり正確に計ることができます。リアルタイムにデータを追っていくという特性上、MMMと比べるとコストも時間も比較的リーズナブル。現状、まだまだ本格的にアトリビューションをビジネスに応用できている会社は日本では多くないようですが、USでは本格活用されつつあるので近いうちに日本でも一般化していくのではないでしょうか。
また、この発展形としてGoogleが取り組んでいるのが、パネルユーザーの自宅にスピーカーを置きTV CMの音を拾い認識させ、平行してオンラインでの行動を追うことで、TVを含めたアトリビューションが可能になりつつあるという手法。他にも、アドテック東京2012においてマス広告も含めたアトリビューションが論じられていましたが、上記のMMMのような統計手法とアトリビューションを融合させるという方向性のようです。
今後にむけて
やはり、マーケターとして大きな決断を迫られるのは、限られた予算をどう配分するかということ。そのために求めているのは、“現実的なコストと時間”で利用できる、“オンライン/オフライン両方を網羅した”分析ツールです。それが利用可能になれば、今暗中模索で行わざるを得ないオンライン/オフラインの予算配分に自信の持てる決断ができるようになると思います。今後の展開に期待ですね!
参考: Forrester Research Interactive Marketing Forecasts, 2011-2016 (US)
The CMO Survey, cmosurvey.org, August 2011 Highlights and Insights Aug 2008 – Feb 2013